電車に乗った。
いつもと同じ風景が流れる中に一つの懐かしい匂いがした。
僕が座ってる目の前に立っているおじさんの匂いだ。
そのおじさんは作業服を着ていて、ペンキの匂いや少し汗のにおいがする。
そのおじさんの匂いは昔懐かしく、暖かい匂いだ。
僕は、すぐに席を譲ってできるだけ近くに立った。
そのおじさんは軽く会釈をし、僕が座っていた席に座った。
できるだけ長くその匂いを嗅いでいたかったが、すぐにおじさんは電車を降りてしまった。
そのおじさんは僕のことを知らないだろう。
僕はそのおじさんの匂いは知っている。
そして父に会いたくなった。

