いつも家に帰る途中にフェンス越しにこっちを見る猫がいる。
家を出る時はいないのに、帰る時にはずっと見ている。
毎日、毎日。
変な話だが、僕は猫に会釈をするようになった。
見えなくなりそうな時に、手を振ってさよならをする。
それは猫が、僕に「おかえり」を言ってくれてると勝手に感じたからだ。
いつしか猫は僕の後ろを着いてくるようになった。
振り返ると止まり、近付くと逃げ、歩くと着いてくる。
一定の距離を保っていた。
ある日突然その猫は挨拶をしなくなった。
いつもの場所にいないのだ。
何が起こったのかはわからない。
その日からは、あの曲がり角のフェンスが「おかえり」を言うようになった。
「ただいま」を言えないことは寂しいと感じた。
ただ、猫に日だまりを見つけられたなら、それでよかったんだろう。
なんて浸ってみた。

